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1] 施策・サービスに対する国民の期待の曖昧さ

行政施策に実際に関わるなど、頻繁に申請・届出等の手続を行っている事業関係者等の一部国民を除けば、多くの国民にとって行政機関は関心が薄い存在である。そのため、国民が日頃から行政事業や行政サービスに対して情報を積極的に入手し、内容を理解することにより、実際に行政サービスを利用する時点で的確な期待を持つような状況を期待することは困難である。また、企業の提供する商品やサービスに関しては対価をその場で支払う場合が多いため、支払額に基づく期待(「この金額であれば、この程度のサービスは当然」といった期待)が形成されやすいが、行政機関の事業に対する対価は税金により間接的に支払われているため、利用者の負担が見えにくい。また、行政サービスに関して手数料を支払う場合も、その手数料には職員給与や光熱費等の当該サービスに係る全ての経費が含まれているとは限らないため、金額の妥当性も分かり難い。このように、行政サービスに関しては、個人が受けるサービス内容やマクロ的な事業効果と個人の支払う額との関係が見えにくく、企業の商品・サービスを利用する前に発生するような期待形成のプロセスが不十分と考えられる。図1-3で示した通り、CSの増減は顧客の期待と事後評価との差に関係すると考えられるが、上記のように行政サービスに対しては顧客である国民の期待が曖昧なため、CSも実態と乖離したものとなり、行政機関にとってCS戦略が立てにくい状況となっていることが想定される。

2] CS評価結果を事業にフィードバックするシステムの未整備

行政機関の場合、会計制度や意志決定の構造により事業を途中で変更することは容易ではなく、CS調査及び評価を行っても結果を事業にフィードバックすることが困難な場合が多い。また民間企業の場合は、企業間競争のため接客部署の社員教育を徹底する企業が多く、顧客応対等のサービスレベルが総じて高いが、地方公共団体の場合は長の方針等により住民応対等のサービスレベルが大きく異なる場合がある。この場合、転入してきた住民が問題点を感じたとしても、そのCS評価を基に急速に改善が進むことは期待しがたい。さらに組織の縦割り構造により、ある行政サービスに対するCS評価の結果として問題点が明らかになった場合でも、他の組織が所管する事業に反映されにくいことも想定される。

このように、行政機関の特性により、CS調査及び評価の結果が事業に反映されにくいことが問題と考えられる。

 

 

 

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