すなわち、集中管理方式という形は想定し得ず、現状のシステム管理を侵犯してはならない。
また、各行政機関、及び各企業における手続きは、全てが電子化されているわけではなく、その処理に要する時間も機関毎にまちまちである。電子化が徐々に進行していったとしても、リアルタイムに処理出来ない部分を完全に除外することは不可能であり、ぺーパーべースの処理とも両立させなければならない。さらに、現行の申請・届出手続きの行われているシステムを、新しいシステムに総交換してしまうということは出来ない。このため、既存のプラットフォームを破壊しないサービスの必要性が出てくる。
ここで提案するのは、各省庁や各企業で、既存のプラットフォームやデータベースの上に、ORB(Object Request Broker)を被せる方法である。ORBのオブジェクトが稼働する設備は、各省庁および各企業の管理下に置かれ、新たに全てのシステムやデータベースを管理するような集中管理サーバーを中央に設置したりはしない。このようなサーバーは、それ自体に管轄の問題が発生するからである。ORBによる新たなシステムを既存のシステムに被せることにより、現在保持するデータベースやシステム基盤に変更を与えることなく、ネットワークで結ばれた新しいサービスが開始できる。
バックエンドに必要なネットワーク基盤は、各省庁および各企業を含んだ、巨大なクローズドネットワークを構築するのが望ましい。ただし、政府の機関と、民間の機関との間にこのようなネットワークを構築するのが困難な場合は、巨大なバックボーンを持つ回線を利用して、強固なセキュリティを保った状態で通信しなければならない。
その際は、暗号化のコストを極力避けるため、ある程度のトランザクションをまとめて1つのものとし、そのトランザクションに対して暗号化などの処理を施す方が望ましいと考えられる。このような手続きには、それほど処理の遅延が影響しないからである。
システムは、各省庁の電子化が進むにつれて、新たなサービスが追加されたり統合されて行くことが想定される。この様な場合でも、システム全体に変更を加えることなく、部分的な変更が容易に出来なければならない。ORBによるプラットフォーム上にオブジェクトで構築されたシステムは、部分的な変更に容易に対処可能で、そのプロトコル規定さえ準拠していれば、追加や削除、変更や統合の場合でも最小限のコストで部分的に対処出来るであろう。
始めから全体を完壁に構築すれば完成というシステムと異なり、各省庁を巻き込んだ大規模なワンストップサービスは、常に進化するものであり、国民に対するサービスの向上のためにも、進化し続けなければならないものであると考えられる。