(c) ステンレス鋼製プロペラ軸の腐食
ステンレス鋼製のプロペラ軸に局部的な腐食が生じることがある。ステンレス鋼の耐食性は、鋼材表面に形成される酸化被膜(不動態被膜)により維持されている。この被膜は、海水中の塩化イオンによって破壊されたり(孔食)、付着物や軸受け材とプロペラ軸の極くわずかな隙間に生ずる溶存酸素の濃度差による一種の酸素濃淡電池作用により局部的に破壊されたりすると、その部分が陽極となり、不動態被膜の陰極との間の電位差によって局部的な腐食が進行する。
防食対策としての留意点は、次のとおりである。
1] ステンレス鋼の表面に異物が付着しないように常に注意する。
2] ステンレス鋼の表面と他の物質との接触面に極めて薄い隙間を作らないようにする。
3] 亜鉛陽極やアルミニウム陽極で電気防食すること。
8.5.3 アルミ船の電気防食
アルミ船を防食する場合は、船体のアルミ合金よりも卑な亜鉛やアルミニウムを陽極とした流電陽極法が一般に採用されている。しかし、アルミニウム陽極を過剰に取付け過ぎると、船体電位(陰極電位)が卑になり過ぎ、船体の腐食量が増すため、アルミニウム陽極を過剰に取付けず、陽極電位の若干貴(プラス)な亜鉛陽極を適正な数量を取付ける必要がある。
なお、アルミ船の場合、外部電源防食法は、電極周囲の電位が局部的にかなり卑になるため、採用しないほうが良い。