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風景刺激の方が単純な空間周波数だけの縞刺激よりは、刺激に含まれる情報量は遥かに多く、構造化にも優れ、さらに日常的刺激であると考えられたのに差がみられなかった、としている。その理由として視野刺激が両者とも二次元的刺激であることが原因とした。今回我々が使用した視野刺激では、ランダムドットパターンよりも実写映像のパターンの方が、周辺視野からの位置情報と三次元的な空間情報が多いため、空間識失調としての自己運動感覚に差が出たと考える。

2) 視野刺激の速度について

傾斜刺激静止の時、すなわち視野刺激のみ条件では視野が低速で動く時のほうが高速で動く時よりも、ランダムドットパターン、実写パターン、いずれの場合もスコアが大きくなる傾向がみられた。低速刺激は高速刺激の時より視野刺激負荷時間が長くなっている。したがって、視野刺激負荷の時間が長ければ、視野情報の影響が強くなり、いっそう空間識失調としての誤認が生じやすいと考えられた。

3) 視野刺激と傾斜刺激の方向と姿勢制御について

視野が傾斜刺激と同一方向、すなわち傾斜刺激、視野刺激がともに重力軸方向の同一方向に動く条件の時、空間識失調としての自己傾斜感覚のスコアは大きくなった。これは、空間識として視野情報の依存度の高いことを示していると考えられる。Dichgans6)らの報告によると、被験者を椅子に座らせ、周辺視野の情報として、被験者の周囲を大きな円筒ドラムで囲い、椅子と円筒ドラムを別個にまたは同時に回転運動させ、被験者の空間識失調としての自己運動感知の方向と回転椅子との関係を調べている。その結果では、椅子に座った被験者と周辺視野のドラムが同一方向に動く時に運動感覚(実際のドラムの回転方向)を誤認していた。つまり、前庭からの回転情報より視野情報の方が空間の運動の情報として利用されていることを示唆している。

 

 

 

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