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視野入力として使用した視野情報は、プラネタリウムの星空を模したようなランダムドットの点状の模様と実際の機内の風景を模した実写パターンの2種類を用いた。

その結果、視野情報は、空間識失調としての錯覚・誤認の発生に重要な要素であり、特に錯覚、誤認を起こしやすい条件として、視野刺激がランダムドットより実写パターンの時、視野刺激・傾斜刺激ともに低速の時、視野刺激が傾斜刺激と同一方向に動く時、であった。

さらに、視野情報に位置情報の基準となる視標を設置することで錯覚・誤認現象の軽減が明瞭に起こり、対策法としての有用性が示された。

航空機の加速や減速など加速度の変化の時に耳石器の影響により、上方や下方の傾斜感覚が出現するが、Pitch方向の傾斜や視野の変化に関して、緩徐な機体の上昇や下降などに伴う視野の変化と同一方向に傾斜感覚が出現すると空間識失調が発生しやすく、その錯覚現象の抑制として位置情報の認識が重要であることがわかった。今後、この巨大半球ドームとフライトシミュレータを用いて左右方向(Roll)の視野や傾斜変化での空間識失調をさらに研究を進める必要があると考える。

*Vertigoという表現は、正確には回転性めまいを意味するが、航空搭乗員の間では、通常、空間識失調のことを示す。

 

 

 

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