日本財団 図書館


これまでに約2000名の脳波を類型化し、青年期脳波のnormal variationの整理、基礎資料の作成を行った4)9)13)17)19)22)23)25)。しかし脳波発達の解明を行い、航空機乗員の適性を考えるにあたっては、さらに縦断的な検討が不可欠である。前回までにわれわれは脳波判定、基礎律動を構成する諸要素、突発波などについて縦断的な比較を行ない、脳波発達の解明と合わせて、脳波上の航空機乗員の適性を検討する上でPTWやα波の周波数、振幅、出現部位、徐波の最低周波数がパラメータとして有用であることを示し、その特徴について報告した26)27)。今回は対象数を増やし、正常脳波のvariationを特定するために、これらのパラメーターが指標となり得ることをさらに詳細な検討を加え、追認することを目的とした。

 

II. 対象と方法

昭和63年度から平成4年度に航空大学校に入学した学生のうち、入試時とほぼ同様の記録条件で、卒業後(入試時脳波から約3または4年後、平均3.1年後)に施行された脳波が入手可能であった176名を対象とした。対象の入試時の年齢は19〜24歳で、入試時平均年齢は21.5±1.3歳であった。

脳波は国際電極配置法(10-20法)に従い、銀─塩化銀電極を用いて記録した。安静閉眼、開閉眼、光刺激、3ないし4分間の過呼吸賦活を行ない、可能なかぎり自然睡眠を含め、約30分間の記録を行なった。脳波判読に習熟した2名の判読者が別々に判読し、大熊の判定基準20)に準じて正常、境界、異常の3段階に評価し脳波総合判定とした。次に、基礎律動を構成する諸要素を、α波または徐波の周波数、振幅、出現部位、出現量およびPTWなどの特徴的な波形について詳細に検討した。PTWは、3〜4Hzで多くは単発性に両側または一側の後頭部に出現し、開眼で減衰するなどの特徴をもち、振幅が出現しているα波の120%以下の徐波と定義した。また今回はPTWをより詳しく検討するために、振幅の高いもの(基礎律動を構成するα波の振幅の50%以上:PTW(+)と略す)と低いもの(基礎律動を構成するα波の振幅の50%未満:PTW(±))に分類した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION