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方法としては、昭和63年から平成4年度に航空大学校に入学した学生のうち、卒業後の脳波が入手可能であった81名(入試時平均21.5歳)を今年度追加し、合計176名を対象とし、入試時と卒業後(入試時脳波から約3または4年後、平均3.1年後)の脳波記録を判読した。基礎律動は、構成する諸要素(α波、徐波それぞれの周波数、振幅、出現部位、出現量およびPTWなどの特徴的な波形)を詳細に検討、類型化した。さらに突発波についても検討したうえで、脳波総合判定(正常・境界・異常の3段階)を行なった。PTWについては、詳細に検討するために、今年度より振幅の高いもの(基礎律動を構成するα波の振幅の50%以上)と低いもの(基礎律動を構成するα波の振幅の50%未満)に分け検討した。

入試時の脳波総合判定では、合格者の20名(11.4%)が境界であり、卒業後では、これら20名のうち5名は境界のままであったが、他の15名は正常となり、卒業後は結果として176名中161名(91.5%)が正常であった。一方、入試時正常であった者のうち10名が卒業後に境界となったが、うち6名は基礎律動の異常であり、傾眠など覚醒度との関係が疑問として残された。突発性脳波活動の出現した残りの3名中2名はいずれもPTWを伴うものであった。

脳波発達と関連した基礎律動の縦断的変化は、PTW出現群で顕著に認められ、徐波では最低周波数の増加と最高振幅の減少が認められた。一方、α波は周波数、振幅とも縦断的変化は示さず、20歳前後がα波の成熟時期あるいは完成時期であることが示唆された。

PTWは、入学時53名(30.1%)に認められたが、その後26名で消失し、脳波発達過程あるいは成熟との関連が縦断的にも確認された。

突発波は、入試時11名に徐波群発を認めたが、9名は卒業後には消失した。卒業後に初めて徐波群発を認めた者は3名いたが、そのうち1名は入試時よりPTWを認めていた。

 

I. はじめに

青年期は脳波学的にみても、思春期から成人期への過渡期にあたり、脳波は様々な発達過程を示し個人差も大きい。そのため、この時期の脳波成熟過程については必ずしも一致した見解が得られているわけではない。

 

 

 

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