Poortmansら1)により運動負荷後に増加する尿蛋白の詳細な分析についてはじめて報告されて以来、蛋白尿と運動負荷との関連性についての研究が数多く見られるようになった。近年高感度の尿蛋白測定法が確立され、微量アルブミンの測定が容易になりその意義が注目を集めている。1984年Mogensenら2)はIDDM患者において運動後の尿中mAIbの増大がDM性腎症の進行と関連し、負荷による尿中mAlbの変動がこれらの患者の早期の腎障害の予知因子と成り得ることを報告し、それ以来糖尿病患者では尿中mAlbの測定の臨床的な意義が確立されつつある。一方未だ本態性高血圧患者においては尿中mAlb測定の臨床的な意義は明かではない。
そこで我々は尿中mAlbに着目し、運動負荷前後の尿中mAlb動態と血圧の変動さらに心血管合併症との関連性について検討し、その機序について考察を加えた。安静時尿中mAlbは正常血圧群と高血圧群で差を認めなかった。しかし負荷後両群において尿中mAlbは増加傾向を示したが、尿中△mAlbは有意に高血圧群で多く、高血圧群では運動負荷による糸球体血行動態やそれを調節因子において正常血圧群に比較して何らかの異常が存在している可能性が示唆された。この糸球体血行動態の調節に血圧の因子の関与を考え、まず血圧の基礎値およびTMET負荷での血圧の変動(△BP)と△mAlbの関連性を検討した。高血圧群の△mAlbの程度による3群の比較では、収縮期血圧において基礎値および負荷5分後・最大負荷時△BPでは△mAlb関連性を認め、△mAlbが多い程血圧値が高く変動も多い傾向がみられた。しかし拡張期血圧においては一定の傾向を示さなかった。
Paoloら3)はHARVESTStudyのなかで安静時mAlbの基礎値が拡張期血圧よりもより収縮期血圧と相関すると報告しており、mAlbの排泄の増加に収縮期血圧の上昇が何らかの糸球体血行動態の調節の異常をもたらしている可能性を示唆している。我々の結果も同様で基礎値収縮期血圧は糸球体血行動態に何らかの過重をかけている可能性が考えられた。また運動負荷による収縮期血圧の変動が大きい人ほど△mAlbが大きく、糸球体血行動態の調節異常を顕性化させている可能性がある。つぎに尿中mAlbと高血圧性心合併症との関連性を検討した。