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以前に我々は白衣高血圧患者や軽症本態性高血圧患者における24時間血圧変動パターンを各種指標で解析し、臓器障害に対する危険因子としてどのような指標に注意すべきであるか検討してきた。その中の一つとして、夜間における収縮期血圧の降圧が不十分であることが左室肥大の危険因子となり得ることが明らかとなった。近年、高感度の尿蛋白測定法として微量アルブミンの測定が行われるようになり、糖尿病性腎症においては組織障害度との相関、更には腎障害進行の予測因子として位置づけられている。一方、本態性高血圧における微量アルブミン尿の臨床的意義についてはいまだ確立されていない。本態性高血圧症においても血圧コントロール状態との相関、しいては心血管合併症の予測因子となりうることが期待されており、安静時尿中mAlbが心血管系疾患の罹患率や死亡率の独立した予知因子なるなどの報告はあるが、尿中mAlb排泄量の正常例においても高血圧合併症の進行した症例をしばしば経験する。そこで今回の検討では、運動負荷時の血圧の変動や尿中mAlb排泄動態が心臓や腎臓などの合併症にどのように関わっているかを調べ、またその尿中mAlbが心血管系疾患の予知因子と成り得るかどうか症例を増やして検討し、さらに薬剤による治療の修飾がこれらの指標にどのように影響するかも検討した。

 

2. 対象および方法

(1) 対象:顕性蛋白尿を有さない未治療本態性高血圧症患者(WHO分類I期、II期)40名(HT群;52.8±8.6歳)、および正常血圧者15名(NT群;47.5±6.2歳)を対象とした。

(2) 方法:全例に超音波断層心エコー検査、眼底検査、トレッドミル負荷試験(TMET)を行った。さらにTMET施行前後で採血を行い、血漿を測定し以下の項目について検討した。なおTMETにおいてBruceProtocolでTarget Heart Rate(THR)≧90%を達成できなかった症例は対象より除外した。

 

 

 

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