1) 運動負荷前後の尿中mAlbの動態について検討した。尿中mAlb基礎値(pre-mAlb)はHT群とNT群で差を認めなかったが、運動負荷による尿中mAlb排泄量(△mAlb)はHT群で有意に増加した。
2) △mAlbと血圧の基礎値収縮期血圧および負荷5分後および最大負荷時による収縮期血圧値の変動と関連性を認める傾向が見られた。
3) pre-mAlbは左室重量係数(LVMI)と有意な相関を示さなかったが、△mAlbはLVMIと有意な正の相関を認めた。UCGによる左室肥大パターンにおいて尿中△mAlbの量を比較検討するとConcentric hypertrophy>Eccentric hypertrophy>Concentric remodering=Nomal limitの順で多かった。
4) △mAlbとCCr・NAG・β2MGの間には有意な関連性を認めなかった。
5) 尿中mAlb排泄動態と心房性Na利尿ペプチド(ANP)は関連性を示せさなかった。脳性Na利尿ペプチド(BNP)の運動による変動は△mAlbと有意な正の相関関係を示した。しかし血漿レニン活性・アルドステロン濃度・血漿カテコラミン濃度は尿中mAlb排泄動態と関連性を示さなかった。
6) 症例数は少ないが薬剤による治療の効果について1年後に同様の検査を行い検討した。ACEI投与群はCa拮抗剤投与群に比して1年後のLVMI及び尿中△mAlb排泄量が減少傾向を示した。
以上のことよりmAlbの基礎レベルではなく、△mAlbは高血圧に伴う心合併症の程度と関連する可能性が示唆された。今回の検討より運動負荷は、潜在する尿中mAlb排泄の異常を顕性化する可能性が考えられた。さらに運動負荷による尿中mAlbの増加量は高血圧性心血管系合併症の指標となり、また高血圧患者の治療法の選択に有用である可能性が示唆された。
1. はじめに
高血圧症による臓器障害の発症・進展、特に心血管系への影響が危倶されており、その重症度はWHO/ISHガイドラインに従って評価されている。臓器障害に影響する因子は様々であるが、血圧値の高さは重要な因子の一つと考えられている。