また図10に検査時間の平均値および標準偏差を年代別に示した。10〜20歳代37±13秒、30歳代38±9秒、40歳代52±33秒、50歳代48±22秒、60歳代66±19秒、70歳代80±33秒、80歳代93±29秒であり、10〜20歳代と60、70、80歳代の各年代との間に有意差が認められた。しかし、通常の視力、視野検査に比較し短時間に検査可能であった。
IV. 考察
航空機運航乗員は、航空機の運航に際して操縦室内はもとより、外界から多量の視覚情報を獲得している。視機能の加齢に伴う変化は、これらの視覚情報の獲得に影響を与える可能性を有している。しかし、航空身体検査においては、視機能の加齢変化を反映する検査がなされているとはいえない。そこで本研究は、各視機能の年代別変化について検討するとともに、より加齢変化が反映される検査法について検索し、視機能の加齢変化が航空業務に及ぼす影響について検討することを目的としたものである。
平成9年度は、動的量的視野、青錐体系感度(静的量的視野)、視力、および色覚の年代別変化について検討し、それぞれ加齢変化がみられることを確認した。本年度は、さらに詳細な加齢変化の検査法について検索するため、航空身体検査法として採用可能で、加えて視機能の変化をより詳細に検出可能とされている色合わせ法とコントラスト感度測定法を用いて、それぞれの年代別変化について検討したものである。色合わせ法としては、青錐体系反応が検出されるMoreland等色1、2)測定法を採用した。また、コントラスト感度は、より実際的な視力(形態覚)が繁栄される検査法3-5)である。
1. Moreland等色の測定
色覚は加齢による影響を受けることが報告されている8)。加齢変化の要因としては、水晶体の黄色化および老人性縮瞳などの眼球の光学的要因と、網膜および網膜から視覚中枢に至る視覚伝達路の加齢変化が挙げられている。