また、操縦室内雑音を負荷する場合には、負荷雑音レベルを81dBSPLに固定して、語音検査のレベルを87dBSPL、82dBSPL、77dBSPL(S/N比でそれぞれ+6、+1、-4)となるように3段階に変化させて聴取させた。語音明瞭度の測定は、すべての雑音でS/N比の低い条件から高い条件への順で行った。最後に語音検査のレベルを62dBSPLに固定し、雑音なしで明瞭度を測定した。それぞれの条件につき、1表50語ずつを順不同で聴取させた。被験者には聞こえたとおりに復唱するように指示し、これをデジタルオーディオテープ(SONY TCD-D10)に録音し正誤の判定を行った。
3. 結果
本研究で用いた負荷雑音(白色雑音、加重雑音、操縦室内雑音)の高速フーリエ解析による周波数分析の結果を図1〜図3に示す。白色雑音が全周波数域においてほぼ平坦な周波数特性であるのに対し(図1)、加重雑音では250Hzまでの低周波数域での出力が大きく、より高周波数域では出力が減少していった(図2)。操縦室内雑音の周波数特性のパターンは加重雑音に類似し、低い周波数ほど大きな出力を有し、高周波数域ほど出力は小さかった。また操縦室内雑音には4kHz付近に鋭いピークを有する成分が見られた(図3)。
図4〜図6に負荷雑音別の英語語音明瞭度の測定結果を示す。語音検査レベル62dBSPL(雑音なし)での正答率(語音明瞭度)は76%から100%で、平均88.9±6.1%であった。
白色雑音負荷時の、S/N比+6、+1、-4における語音明瞭度はそれぞれ68.5%±12.5、54.0%±16.7、33.1%±19.0(平均値±標準偏差、以下同様)であり、加重雑音負荷時の語音明瞭度は、77.8%±11.8、68.2%±14.2、46.0%±17.1であった(図4、図5)。一方、負荷雑音レベルを81dBSPLに固定し、語音検査のレベルをS/N比で+6、+1、-4となるように変化させて聴取させた操縦室内雑音負荷時の語音明瞭度は、それぞれ76.9%±12.0、69.4%±12.7、51.2%±17.1であった(図6)。