しかし、航空機の操縦室内で英語を用いることを想定した場合、S/N比の高い条件下での聴力検査のみでは、航空機の騒音下における語音聴取の実態を把握するのは困難である。そこで本研究では、実際の操縦室内雑音を含めた雑音負荷時における英語の語音明瞭度の測定を行い、騒音が日本人の英語語音聴取に与える影響について考察を行った。
2. 対象と方法
(1) 対象
19歳から29歳までの大学在学中の学生や大学卒業程度の英語学習経験があるもので、現在も英会話等で学習する機会や海外滞在経験のある正常聴力者13名を対象とした。
(2) 検査方法
検査はすべて防音された暗騒音レベル35dB(A)以下の聴力検査室内で行った。検査の手順として、まず純音聴力検査を行い、正常聴力であることを確認したうえで、英語の語音聴力検査を行った。英語の語音聴力検査では、雑音なしの条件と雑音負荷の条件で語音明瞭度の測定を行った。
《純音聴力検査》
純音聴力検査の測定機器として、オージオメーター(RION AA-61BN)を用い、ヘッドホン(RION AD-02)を介して被験者に検査音を聴取させた。純音聴力検査では、125、250、500、1000、2000、4000、8000Hzの純音の気導聴力レベルを測定した。測定する全周波数において、気導聴力域値が15dBHL以下であることを確認したうえで、次の英語の語音聴力検査を行った。