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つまり、集団保育環境で育ち、実家庭やいわゆる家庭的養護の経験に乏しい児童が、はじめて家庭的養護・養育を受けることの福祉上の課題と関係してくる。このような状況で里親委託への措置変更がなされた場合の、里親家庭の側の受け入れ体制には、相応の専門的要件が求められる。そして、過去の養護経験の状況は言うまでもなく、里親と子どもとの適合性や相性、委託上の配慮、課題が重要となり、とくに里親による家庭的養護の質が一層重視されてくる。先ずこの観点から、考察を加えることが重要である。

 

2. 里親から施設へ措置変更される背景

 

先ず第一に検討すべきことは、上述の特徴を持つ事例が施設へ措置変更されることとなった背景である。児童が結果的に集団保育環境へ措置変更された背景をみると、二つの点が上げられる。第一に、里親制度という福祉上の重要な目的、つまり可能な限り早期に家庭に復帰させるという目的を達成するには、多くの児童にとってその家庭が安心して復帰すべきところではなかったということがある。そして第二に、そうであれば比較的長期間安定した里親家庭環境のもとで生活し、自立を援助すること、あるいは養子縁組に移行することが重視されてくるが、しかし里親による養育の体制あるいは児童の側、児相の側に何らかの問題や不備をきたしたために、それを果たすことに限界があったということがある。

 

 

 

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