会話の内容は、私にはベトナム語でわかりません。一人田舎に残って淋しくなって、東京に行きたい、と思うのではないかと心配でしたが、翌朝は何事もなかったかのように元気で登校して行きました。
彼の性格はよくおしゃべりし、明るくて、落ち着いて冷静な行動をするいい気質の少年でした。
あの冷静な行動はどうして身についたのかと思いますに、それはきっとベトナムを小さい木造船で脱出し、33日間の生死を分けた、つらい漂流、友の死、二回も台風に遭遇し、誰も体験したことのない死線を越えた数々の経験から身についたのではないかと私は思っています。そして、成人した今もその性格は変わっておりません。
中学三年生になると、学力も向上して、上位までに頑張りました。進学となると私も世の親並に悩みました。県立の進学校には国語力で、今一歩という実力、受け持ちの先生も時間をかけて、じっくり力をつけたほうがいいという指導もあり、市内の私立高校を選びました。
卒業の時「熊本県青少年育成県民会議」から表彰していただき、3人で感激しました。