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初めて、本読みの宿題が出たとき、実際はほんの数行の文であったが、一文字一文字を解読している段階の彼にとっては、それは、とても大変な宿題であった。それでも、『大きなかぶ』のお話を学習する頃には、「うんとこしょ」と読むところを、口癖のように「うんこらしょ」と読んだりするぐらいで、著しい上達ぶりを見せていたが、そのまとめの学習のプリントでは、「大きなかぶができたときおじいさんは何と言ったと思いますか?」という設問にたいして、彼は、「夜に一人で食べよ」と書きこんでいた。ほしいものは全部一人占めしたいという欲求をそのままに表現しているのだろうが、先生の予想を超えた回答だったにちがいない。

電話のあった次の日は、はらはらしながら、着替え、食事、本読みとプリントの宿題、鉛筆削りと、時計の針とにらめっこでの送り出し。坂を下っていくNYの後ろ姿を見送りながら、続いて、MHの方の、日課帳の保護者欄の記載をやったり、毎日洗たくして持っていかなければならない体育着その他のものの準備をして、本日の学校への送り出しはひとまず終了。

 

 

 

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