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それは、勤務先の同僚が次々に結婚、挙式に招かれることが多くなり、それにつれ、精神的な動揺、身体的な不調を訴えて、あちこちの病院に通うことが多くなったのである。そんな矢先、妹の結婚が決まった。それを知ったA子は、通動時間ぎりぎりまで布団の中にいたり、食事をとらなかったり、外出が多くなったりと、再び自由奔放な生活へと流れた。そして、そうしたすべての原因が私共にあるといって泣きわめいたのだった。そのあげく、結婚相手に恵まれないのも私共がじゃましているからだ、とまで言い、夫も私もあきれ返った。これらの言動に私共はできるだけ冷静に対応をくり返そうと、奥歯に力を入れたり、握りこぶしに力を入れたり抜いたり、しんどい日々を過ごした。しかしこれが里親の越えなければならない大事な親業であると自分に言い聞かせた。そして、A子の気持ちに波風が立っていない日を選び、分かりやすく話をすることに力を注いだ。すなわち、結婚の時期は必ずしも上から順という訳にはいかない。A子の言うことはすべて聞くけれど、A子の思い通りにすべて動くとは限らない。あなたの考えるようにでなく、皆のために地球は回っているのだ、ものにはすべて時があって、A子に社会に通じるわきまえができた頃、神様はきっといい方を与えて下さるから、安心して待っていなさい。

 

 

 

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