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(11) 続く日々

A子は、資格を有する同じ職場の人たちとの交わりが日々濃くなり、家庭を訪問したり、食事をともにすることも増え、帰宅が次第に遅くなっていった。皆が待っているからと携帯電話を購入、A子の帰宅は携帯電話の響きでわかるという具合になった。それまでは誰からの電話であるか内容も大体つかめたが、携帯電話を持ったその日から不明となった。A子とも距離を感じるようになり、外出の折には行き先と大体の時間を知らせておくように話すと、そのことが次第にうとましいと、反抗的な言葉が多くなってきた。「私が何時に帰ってこようが、どこで過ごしているか、いちいち心配するなんて!」と言い、「そんなこと言う家は友達にはいない」と言い切った。休日の度ごとの外出も話をすると、「この家には自由がない。休みは私のものだ」と言い張った。感情が爆発し、とどまるところを知らないA子のあきれる言動が続いた。ただ私共は、事あるごとに冷静に対応するように努め、疲れを見せなかった。困ったA子は、次にアパートで一人暮らしをしたいと言ってきた。一方的にここから出て行くのならさっさと探してきなさいと、夫とあっさりと返事をした。「うん。じゃあ、アパート探しをするから何時に帰るかわからないよ」と、ふてぶてしくさえ見える表情でA子は勤めに出て行った。

 

 

 

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