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喜んだら次は車の運転免許取得の話。就職する前にどうしても取りたいとの希望を受け、教習所通いが始まった。これまた他の人に比べ、遅々として進まず、A子が帰宅すると夫は車を出し、個別指導を続けた。ようやく免許が手元に届いた頃には青葉の時期になっていた。高校の卒業式は、とうの昔に過ぎていた。

(9) 就職

学校からの推薦も得て勤め始めたパン屋にA子は2年勤めて退職し、夫の知人に無理を言って懇願し、A子は大病院の厨房で働き始めた。しばらくおとなしく通っていたが、同僚がすべて調理師か栄養士の資格を有しており自信をなくし、帰宅すると「いやになった」と口にし始めた。「だから言ったでしょう。短大に入ってもう一度勉強すればって」「こんなことになるとは知らなかった。もうやめたい」の押し問答が何日か続いたある日、私はA子に「そんなこと言ってないで、一つハードルを越える努力をしてみたらどう?きっといいことがあるから。A子が勉強する気なら手伝うよ」と言った。一晩考えて、A子は、私たちに「調理師の勉強をさせて下さい」と言った。

 

 

 

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