「わかった」と言い、長女は庭先に戻っていった。4・50分たった頃だろうか、窓から4人を見た私は驚いた。4人の頭がバケツの上に固まって動かないのである。「どうしたの」と声をかけると、「爪が痛くてむけない」と、小さな誰かの声が返ってきた。どうしたのだろうと思った私は、あわてて4人に近寄った。すると下の2人の手の爪が紫色をしているのである。次女が、「爪が痛くてむけないの」と言い、長女は手を見せながら、「水が爪にしみてとっても痛いんだよ」という。4人がそれぞれ控えめに爪をおさえたりなでたりしている。じゃがいもの入った水の上に涙が落ちていた。
長い間、児童養護施設で子どもと生活してきた私であるが、この暑い夏の最中に、水に手を入れると爪が痛むという子に出会った覚えがなかった。これはただごとではないと思った私は、家の裏の方に行っていた夫に思いきり大声で声をかけた。驚いた夫は、「これから真剣に食べ物のことを考えていかなくてはならないな」と腕を組んだのであった。