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家庭養護実践を夢みて、夫とともに汗水流して準備した日々を思い、今その夢が実現しようとしているのだと、期待と緊張と夢がひとかたまりになって鼓動しているのが感じられた。午前10時を過ぎた頃、児童相談所(以下、児相)の車で、4人姉妹はやってきた。すりへったゴムぞうりの長女(小学6年)、足もとおぼつかずといった様子で車から降りてきた末っ子の幼稚園児。細身でいかにもしっかり者といった感じの次女(小学4年)。最後に降りてきたのは三女(小学2年)。どう見ても栄養不足らしく顔色もさえず、生気がない。そんな出会いだった。4人姉妹を離れ離れにしたくないこと、実父の暴力や虐待、就労怠惰などの問題につき、施設職員の経験を生かして、私たちに対応が可能では、とみて、このケース関係者は喜んで委託したとのことであった。

児相の方が帰られた後、夫は「お昼に肉じゃがでも作ってもらおうか」と子どもたちに声をかけ、じゃがいもの皮むきを促し、一緒に始めた。バケツに入った掘りたての新じゃがを夫から受け取った4人は、家の前の庭で腰をおろした。しばらくすると長女が私のところへ来て、いもをむく包丁がほしいと言うので、「新じゃがだからかんたんに、爪を使ってこうするとむけるよ」と教えた。

 

 

 

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