A子は、中学生になった頃から「自分はこの家で大きくなった。だから、ここから嫁いでいきたい」と、口癖のように言葉にしてきた。そして、このほどA子の口癖が実現しこの夏、我が家での17年の生活にピリオドを打ち、幸せな結婚をすることができたのである。
我が家での生活にも慣れてきた小学生の終わりの頃、A子はふと、「あたし、この世に生まれてこなけりゃよかったって、何度思ったかしれないんだ」と、もらした。この言葉を重く、深く受け止めた夫と私は、いつの日にかA子が生まれてきてよかったと思える日が来るようにと祈りながら、ひたすら育て、17年が過ぎたのである。しかし、その間の道のりは、容易なものではなかった。A子が成長するにつれ、心痛で頭を抱えたくなるような日々が続出した。「この子の里親となった以上はその責任を忘れず、望みを抱いて」と自分に説き聞かせつつ過ごしてきた日々であった。
さて数日前、A子は、念願であった北の大地・北海道のハネムーンから戻り、いかにも嬉しそうにやってきた。夫の好物のすいかを下げてきて、「これ、食べてねー!」と夫に差し出し、あたりを見回しながら「あのね、あたしさあ、どんなに注意されても、この家が一番いいよ。本当。本当だよ!」と、半ば叫ぶように言った。