器械体操というものは、床、平均台、跳馬、段違い平行棒と4種目から成り立っています。すべて出来なければならないので、脚力をつける為に校庭を早い速度で走ったり、腕力を付ける為に腕立てふせをさせられるのですが、私はこの時点で、腕立てふせも腹筋も、全くと言って良いほど出来なかったのです。
私は、悔しくて、悔しくて、家に帰ってからもトレーニングを続けました。バス通学でバスの中でも、いくら疲れていても行きも帰りも座らず、かかとを上げて乗っていました。私は家に帰ってくると、必ずお母さんに「お母さん、私、本入部しないまま体が痛くて死んじゃうかもね。」と笑いながら言っていました。それ程、体力作りの基礎というのが大変なんだという事を、改めて知りました。先輩方の華麗(かれい)な宙返りや、ばく転は、私を釘付けにしました。テレビなどでしか見た事のない、宙返りやばく転を、こうして目の前で見る事が出来るなんて、とても幸せに感じました。「私も、ばく転ぐらい出来るようになりたいなあ。」と心の中で思っていたのです。