そんな父親も、K君が高校二年の8月7日、とうとうこの世を去りました。「病気が悪くて、もう生きられそうもない」という電話の声は、今にも消え入りそうでした。「生きているだけでも子供のためなんだから、頑張ってください」と励ましてから、わずか半年足らずのことでした。たとえ模範的な親ではなくても、子供が高校を卒業するまでは生きていてほしかったと思います。
一日も休まずサッカーに励むK君の強い意志は、親からもらったものです。父親はこの子供の中で生きているのだと思います。
ある日の突然の父の死に、子供は何を思ったでしょうか。15年離れて暮らしてきても、やはり父子です。しかし就職する前のこと、K君は私に「このほうが母さんのためにはよかった」と言うのです。なぜかと聞くと「父は生きている間、ずっと母さんのやることに反対ばかりしていた。でもぼくの就職のことまで反対されるのはいやだった」と言います。一人で自分勝手にばかり生きてきた父の姿に嫌悪感を抱いていたのでしょうが、子供ながらに私への気遣いもあったのでしょう。