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K君は小学四年生頃から、サッカーが大好きでした。毎日毎日が練習で、雨の降った日などドロドロになって帰ってくるので、洗濯が大変でした。父親は「サッカーなどやめさせろ」とまで言ってくるので、そんな父親をK君はだんだん嫌いになっていったようです。父親からだとわかると電話にも出なくなってしまいました。

気持ちよくボールを蹴るK君の姿を、私はいつも木の陰から見て心の中で声援を送っていました。ぜんそくで病院に入退院の繰り返しだったK君は、サッカーのおかげですっかり元気になったのです。そんな子供を誉めるどころかただ怒っている父親は、嫌われても仕方がありません。

一年に2、3回「遊びに連れてってやる」と言って迎えに来ることも嫌がっていましたが、それでも「行かない」と言うと叩かれるので、仕方なくついて行っていました。

私の里子で高校に受かったのは、K君が最初でした。いろいろ相談にものってあげ、合格発表を子供より先に見に行ったりした私にとって、こんなうれしいことはありませんでした。でもわが子の教育に無関心な父親は「そんな学校に入ってどうする」と言って、K君をがっかりさせました。

 

 

 

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