ある日J子ちゃんは、施設からいなくなりました。先生方は捜す当てもなく、みんなで相談して、とりあえず連絡を待ってみることにしました。
そこへ突然私のところへ、東京からの電話です。「二、三日前にうちの子が女の子を家に連れてきたんですが、お宅の娘さんじゃないかしら。うちの子も少し知恵遅れで、毎日のように出かけるのですが、新宿で友達になったみたいです。ここからいなくなったらどこへ行くかわからないので、早めに迎えに来てください」ということでした。住所と電話番号を聞き、施設の先生方にも連絡して、すぐ東京へ立つことにしました。
お母さんに会いたいという強い気持ちが、これまで一人で旅行などできないと思っていた子供を、行動に駆り立てたのでしょうか。というのも、お母さんからは一度電話があり、「あなたとはもう母でもなければ子でもない。東京にいるけど、捜さないでほしい」とJ子ちゃんと話していたことがあったのです。
