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片時もじっとしていないような子供でも、親の姿を見つけると、ちゃんと机に向かってくれました。

子供に友達が沢山できるのは喜ばしいことです。私も子供の親として、よそのお母さん方との会話も増え、私自身の友達も増えます。子供が一人増えればさらにその輪が広がります。本当にすばらしいことです。

四年生になるとM君は実の母親に会い、小学校卒業後一度引き取られていきましたが、いろいろと問題を起こしたらしく、やがて戻ってきました。帰りたくないという子供の気持ちを踏みにじることになりましたが、私はやはりM君を親元へ帰しました。

いよいよ就職する年になっても、子供は最初から満足できる職には就けないものです。M君も何度か職場を辞めたりしたけれど、その都度私は「あんたには向かなかったんだね。また次を捜したらいいよ」と、怒らないようにしてきました。

そして今ではM君はタクシーの運転手として頑張っています。昔と変わらぬ笑顔でお客さんにも好かれて、「指名がいっぱいだから大変だよ」などとぜいたくな悩みを打ち明けています。私がいつも歌を歌ってあげていたせいかどうか、彼もまた歌手のように歌がうまく、「お母さんより上手だろう」と、タクシーを運転しながら自慢気に歌を口ずさむ彼は、本当に幸せそうでした。

 

 

 

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