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それでも乳児院の前まで来ると、初めて見たときは生まれて間もない赤ちゃんだったのが、どんな子供に育っているか、まるでわが子を迎え入れるような期待と不安で胸がいっぱいになりました。

色白でかわいい子でした。さっそく抱こうとすると泣き出します。院の方に抱かれたら泣きやみ、そのまま私の車に乗せてもらいました。いざ乗ってしまうと抵抗することもなく、車にしがみついて喜んでいます。その日からは、里親として忙しい毎日が続きました。

実の娘は当時小学三年生ぐらいだったでしょうか。最初は変な顔をしていましたが、長く一緒にいると、忙しい親を気遣ってか、だんだんと遊んでくれるようになりました。散歩にもよく連れていってくれ、夜には枕を並べて眠るようにもなりました。子供たちの寝顔を見て、改めて家族が一人増えたんだなあと感慨もひとしおで、私もそっとその隣で床に就きます。

子供の悪い癖というものは、母親の手で直せるものと直せないものがあります。この子−M君は、3歳近くまで乳児院で育てられてきましたが、その時に身についた悪い癖がなかなか抜けず、私を悩ませました。

 

 

 

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