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戦争のさなか、死ぬか生きるかという大変な状況の中で、樺太から逃げ帰ってくるときに、よその子供まで連れてきたという話も聞きました。そんな義母に負けられないという気持ちもあり、引き受けることにしました。昔の母親は強かったというけれど、自分にもどこまでやれるか、頑張ってみることにしたのです。さっそく書類を書き、それから3ヵ月ほどで短期里親として登録されました。

ある日のこと、私は向かいのアパートに住む女性から、子供を育ててほしいと頼まれました。2人の、それぞれまだ2歳と0歳の子供でした。その無責任さに私は腹が立ち、さっそく警察と民生委員に電話をして来てもらいました。子供は2、3日ほどで乳児院のほうへ引き取られました。女性は18歳の見習い看護婦で、これで心置きなく職場に行けるなどと喜んでいました。育ててもいけないのに簡単に子供を作って、そして身勝手な行動に走る女性が増えてきたのでしょうか。別れるときも涙も見せず平然とした態度で、子供への愛情がまったく感じられない親でした。

それから後、上の男の子は同じ里親会の方に引き取られたということでしたが、下の子供は結局私のところへ里子として来ることに決まりました。私自身は仕事が多かったため、すぐ引き取るのをためらいましたが、覚悟を決めて迎えに行きました。

 

 

 

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