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そうなりますと今、一番それがはっきり現われていると思うんですが、後は子供の教育にエネルギーを注がらざるを得ないという形で、どんどん専業主婦であればある程子供にだけに関心、子供へのエネルギーが出てきて、いろんな事が言われる状況がもう10年以上続いている訳ですね。

一番重要な事は、そういった生みの親、育ての親、一番肝腎な存在であるはずの母親に子育ての安定性が欠けはじめた。妊娠しても子供というすばらしい存在を実感として受け止められない。なんか異物ではありませんが、お腹がだんだん膨らんでくると、かえって不安が生じてきたり、生んだ後もどうやって付き合っていいか分からない。マニュアル片手に一生懸命やればやる程、マニュアルと実際の子供とのずれが大きすぎる。ウワーどうしよう!ギブアップしたり、パニックになってしまう。

本当に子供時代から子供と触れ合う、結婚の準備性もそうですが、子育ての準備性も、殆んど経験できずに、今育ってきている。こういう状況の中では、母親・両親を含めてですが、とりわけ母親が本当に不安になるのは当り前なんですね。むしろどの子育て家庭にも、従来でしたら福祉を必要とする家庭等という事で限定された福祉の対象が、どの家庭でも子育て不安や子育ての孤立感を持たざるをえない状況が拡がってきています。

そしてもう一つちょっと加えさせて戴きたいのは、これは歴史が変ってきたなと思う例ですが、私は人口問題審議会という所で、専門委員の役割を仰せつけられて、一昨年日本の将来少子高齢化社会に向けてどんな事が必要かというかなり時間とエネルギーを注いで、纏めた人口問題審議会の意見書が出ました。

その中でも議論ありまして、つまり3歳児神話を克服するといったらいいでしょうか。3歳児神話を見直すという事が出てきました。これはどういう事かといいますと、男は仕事、女は家庭という価値観の中で、本当に家庭の中でしかも地域とも関わりなく子育てに勤しめば勤しむ程、世の中は何か事があると、そのお母さんに責任や原因や時には悪いのは、というふうにどんどん持っていきがちですね。

その一方で、母親は3歳迄は家庭で子供を育てなくてはいけないという、これがいわゆる3歳児神話といっていいでしょう。母性神話というのは、子供を育てるのは一番母親ですよ、貴女ですよ、貴女がしっかりしなきゃ駄目ですよというような事をどんどん作り上げてきた社会、文化、それから専門的にも、実はそれを裏付けてきた部分もある訳ですね。私自身はかなり以前から、保育の経験を受けている子供達、例えば0歳から保育を受けている子供達、そのような子供達や親は、以前は一番非難の対象にあった訳ですね。「O歳から子供をよそ様に預けて、へェーいくら仕事が好きだからといって働きに?」というのは結構強かった。今でもそうなんですね、その部分はまだあります。

ところがどうも色々調べていくと、大正時代も僅かですが、昭和に入ってキャリアウーマンって以前から随分いましたよね。特に学校の女教師という方々は、随分結婚しても働く、子供を生んでも働いている。まあ、その時はお婆ちゃんがいるから心配ないじゃないですか、実はこれだってもう母性神話を、もし母性という事が大事だったら否定している事になる訳ですが、そういうことは、例えば、キャリア的女性が何かあってもあんまり世の中は非難しなかったんですね。多くの一般の女性が働きに出れば出る程、そういう方達への非難が強まってきました。

しかし、実際には児童福祉法ができて、保育所がどんどん拡がってもキャリアウーマンと言われる方達、かなりいろんな苦労話を今でも聞きますし、いろんな事で本に出たりしていますが、やはり、お婆ちゃんに育てられるという事ができる人は限られていましたね。ですからどれだけ、日中子供を預かってくれる所を捜す事に奔走したか。保育所も少ない、その後ベビーホテルの問題がありましたが、お金かけてもいいから子供を預けて働く、その一方、やっぱり子供に対しては後めたさ「あー日中一緒に居てあげられなくて」という気持、むしろ以前の人達は、ずーっとそういうような気持が強い中で子供を育ててきました。

 

 

 

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