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子供は人から正されて、何が正しいかを学んでいくのであり、悪い行動に出る子供は、何が正しいかを教えられていないのである。子供が悪い行動に出る時がサインであり、これは親の愛情やケアを必要とし、家族の一員になりたがっている事を示す。このサインは親から適切な反応が返ってくるまで続けられる。

 

人生の初期が大切

人生の初期(子供時代)に受ける経験は、将来その子供の人生に大きく影響していく。子供時代に学習したことがその子供の人生を左右するため、この時期のケアはとても重要である。

 

里親自身の改善から

子供をよい方向へ向かわせるためには、まず里親自身が態度を変えて行く必要がある(子供への反応、対応、ケア、親としてのあり方など)。

里親両親の間で問題があると、里子のケアは困難となり状況は悪化する。これを防ぐためにも里親たちは問題解決策を知り、お互い助け合うことが大切である。また、危機に陥っている時の里子に対する効果的な対応を、里親はあらかじめ用意しておくべきである。ここで先を見越して、里子を癒していくための行動手段を計画することが、行き詰まらないための重要なカギとなる。

 

里子との触れ合い

里子がもつ過去の経験をすべて理解し受け入れていく。そして誤解を解き、感情というものは何か、どのように表現するのかを教えていく。自分が感情的、身体的に敏感な世界に生きていることを教えるのである。里子は過去の境遇により傷ついており、これは家庭内でしか癒すことができない。里子の気持ちを理解し、積極的に癒し治していく家庭の中で初めて、子供は家族がどのようなものか、世界がどのようなものかを知ることができる。さらに、愛情も家庭内でしか教えられない。抱擁や、スキンシップといった無条件の愛情を示しケアをすることにより、子供は人を信じることができるようになる。つまり、里親と里子の親密な関係が子供の復帰を助けるのである。里親が心身共に健康であると、里子も健康になるのである。子供はよい方向に向かう前に一度は悪い経過をたどるものであり、里親は子供の悪い行動に遭遇しても、これは回復の前段階であり、むしろよい徴候とみなすべきである。

 

里子の養育は長期戦

基本的に里子を生み親の元へ返すことが目標であるが、生み親の経済問題、里子の素行問題などにより、里親による里子の養育は半永久的なものとなりやすい。そのために、里親は充分な経済力、エネルギー、健康が必要となるが、国からの支援があまりないのが現状である。国の支援は里子を里親に預ける最初の段階に重点を置きすぎており、その後の里子の養育のためのサポートに欠けている。里子の養育の成功の有無は、里親家庭での生活が始まってから決まるものであり、そのためにより多くのサポートが必要なのである。里子を復帰させることは大変なことであり、長期戦でもあるため、行き詰まった時は子供、家庭、ストレスから離れて休息することも大切である。どんな子供も一度、家族の一員として感受性豊かなケアや愛情を受けると変わっていく。このことを心に留め、悲観的にならず楽観的に最後まで子供を見守っていくべきである。

 

○題:養育研究

講演者:コンスタンス・カス(アメリカ合衆国・コロラド州立大学)

 

1. 講演者の紹介

アメリカ合衆国のデンバーにあるコロラド州立大学で心理学を専攻し、1996年に卒業。現在、片親でありながら、3人の息子(12、14、19歳)と暮らしている。講演者は過去7年以上に亘って里子として生活した経験を持っており、6人の兄弟・姉妹とは離れて暮らしていた。

 

 

 

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