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図18]新婦の実家で親族に挨拶をする新郎。必ず男性が左に、女性が右に座る。

 

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図19]化粧中の花嫁。

 

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図20]花嫁の襟元に繕いつけられた魔よけ。新郎も同様のものをつけている。

 

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図21]兄に抱かれて実家を後にする花嫁

 

新郎が中庭に現れると音楽のテンポが早くなる。四角が始まる。まず、祭壇の前で、鏡を覗く新郎の顔を母親がそってやる。そして総関の指示のもと、布団の上に置かれた五枚の紙を中央から順に踏んでいく。最後に、祭壇に向かって一礼すると花嫁を迎えに出発だ。爆竹隊のオートバイを先導に、楽団を乗せたトラック、新郎と媒人の乗った車、女性親族の乗った車が、花嫁の家に向かう。新郎以外の男性は、けして同行することはない。

花嫁の実家につくと礼房に通される。ここで、新郎は儀式が始まるのをまつのである。楽団も大街門の脇にスタンバイする。まずは、レストランで花嫁側の親族に招待されて昼食をとった後、新郎の家に置かれていたのとほぼ同様の祭壇の前で儀式がとりおこなわれる。儀式といっても、新郎が新婦の親族に挨拶をして、御祝儀を受け取るという簡単なものだ。司会を勤めるのは新婦側の総関である。祭壇の両脇に年長者夫婦から順に呼び出される。座る側から見て、夫が左、妻が右に座る。そう、呼ばれる順番には長幼の序列、座り位置には男女の序列が厳然と表れているのだ。男女の左右への振り分けについては、単に序列だけでなく、男性=陽=東(左)、女性=陰=西(右)のように陰陽の観念も組み合わされている。この二人に向かって新郎は、「あなたに深い礼をします」という意味の言葉をかけながら、深く腰をまげて敬意を示す。その姿勢に納得した新婦の親族は、総関に御祝儀を渡して席を立つ。

一礼で納得しない人たちは、新郎の言葉が聞こえない振りをしたり、両手の親指で作った輪を新郎のおでこが叩くまで、礼をさせる。無論、意地悪な振りをした一種の遊びだ。この繰り返しがえんえんと続く。婚礼は、冗長な儀式にも思えてくる。しかし、繰り返しおこなわれる儀式的なやり取りは、主客、長幼、そして男女の序列が、方位・左右の序列と結び付けられていることを強く認識させる。

 

 

 

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