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◎嫁入り道具がやってくる◎

婚礼前夜の夕方、爆竹を打ならしながら、トラックがやって来る。嫁入り道具をたずさえた新婦の親族の到着だ。新郎とその一族が出迎える。テレビ、洗濯機、オートバイ、自転車、食器から洗面具にいたるまで、全ての品々に紅い喜喜が貼ってある。まっ先に新郎に手渡されたのは鏡である。前にたらされた紅い布をめくり、鏡に向かって身繕ろいをした新郎は、これを胸に抱えて、先頭を歩いていく。鏡は魔よけの道具の代表的なものの一つだ。彼の後から、家族、友人総出で嫁入り道具を新居へ運び込んでいく。これが終ると、新婦の親族をもてなす祝宴が始まる。その間、新郎の親族は、嫁入り道具の品定めに興じる。ちなみに、購入費用は、新郎もちだ。(図11]〜13])

 

◎花嫁を迎えに◎

婚礼当日の朝、女性の親族は忙しい。飾り付けを済ませると、祭壇の前で、ちいさな枕を作り始める。楽団は、休みなくマーチを奏でる。新婚夫婦のための一対の枕に、藁、箸、胡桃、棗がつめられる。棗は早、箸は快の発音と同じである。すなわち、早く子供が授かるように、との願いをこめているのだ。次に、新婚夫婦が使う真紅のふとんを祭壇の前に敷き広げる。布団の四隅と中央に、銅銭と棗を重ねて紅い糸で縫い付けていく。その上に紅い紙が置かれる。

新郎が069-1.gif四角という儀式を、この上でおこなうために。さてこのころ、新郎は着替えの真っ最中。お姉さんに手伝ってもらって、胸に紅い花をさした新品のスーツをはおり、髪を整えてもらっている。最後の仕上げに、スーツの襟首に魔よけの道具をつけてもらった。

 

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図14]枕に棗、胡桃、箸を詰め込む。

 

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図15]新婚夫婦の使う掛け布団に、棗と銅銭を四人がかりで縫い付けていく女性親族たち。この作業中、彼女たちは紅い頭巾をかぶる。

 

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図16]縫い付けられた棗と銅銭に紅い紙がかぶせられる。

 

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図17]五ケ所に置かれた紙の上を、新郎が踏んでいく。

 

 

 

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