敦賀と若狭になると、御幣も民俗神の祭りから、郷社の祭りで使われるものまでたいへん豊富になる。小浜市須縄(すのう)の山の口講では大きな御幣とともに一〇センチ足らずの割木に矢筈のような紙をつけた物が用意されるし、大飯(おおい)町大島や敦賀市砂流(すながれ)の勧請縄にも小さな御幣がつけられている。敦賀市刀根(とね)の霜月祭りでは幣軸の先に、結び目をそろえて金と銀の水引を大量に結び付ける。個々に見始めるときりがない。代表的な物だけ見ることにしよう。
男神と女神の御幣……敦賀市沓見(くつみ)には信露貴彦(しろきひこ)神社と久豆禰神社があり、地元では男宮、女宮と呼ぶ。祭りは五月五日である。両社とも宮座をもち、獅子舞・王の舞・田植えをする。男宮と女宮であるから、祭りは一種婚礼に似ている。