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12]左から山ミサキ、川ミサキ、スソ、四足、六道、道六神の幣(中尾計佐清太夫作)。山の神の眷属の幣。

 

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13]呪詛のみてぐら(中山義弘太夫作)。

中央に立つのは呪詛の祭文の主役・ダイバの人形幣。

 

邪霊…取り分けや病人祈祷の祭壇である「法の枕」とか「幣のもと」と呼ばれる米に、大荒神、山の神、水神などの幣とともに天下正(てんげしよう)、四足(しそく)、スソ、六道(ろくどう)などの幣を飾る。これらはそれぞれ疫病神、動物霊、人間の邪悪な心、死霊をかたどったもので、人間に災厄をもたらす存在である。目口はなく、山川のものの幣に比べると抽象的な幣である。

みてぐら…いざなぎ流の「みてぐら」は、そこに悪いものをまつりこめ、集まったところで廃棄するためのものである。円形の藁すぼに、何本かの幣を突き立てたタイプのものと、「つりみてぐら」と称される、一枚の紙から袋状の部分を切りだし、そのまま地面に突き立てる簡単なタイプの二種類がある。それぞれ、藁すぼの底の花ベラという紙や袋の中に米粒を投じながら、黒米千石白米(くろよねせんごくしろよね)千石ま米(よね)千石の三千石の供えをするので、このみてぐらに集まるように祈る。

式王子…式王子は、病人祈祷や「取り分け」儀礼において、病気や災厄の原因となっている邪悪な神霊を追い払うために太夫が使役する霊的存在である。その出生は異常誕生として語られ、あまりに暴力的なパワーのために居場所がなく、ふだんは天竺なんたの池に沈め、必要なときに式の警護、式の王大神、じもんの博士の御祈祷神としておこなうものである。式王子にはその目的によっていくつかの種類があるらしい。「取り分け」には高田の王子、病人祈祷には五体の王子、虫祈祷には大たか式などである。そのほか三国(さんごく)荒敷、ちむらさん王子、さかごの王子などの幣が伝承されており、これらも祈祷の内容によって使いわけたことが推測されるが、すでにその用法は不明な点が多い。

この凶暴な力をもつ式王子を人間に対して用いると呪いになる。「式を打つ」というと高知県では広く人を呪う意味に用いる。本来の意味を知らずにこの言葉を使う人が多いが、式を打つとは、すなわち式王子を使って相手を攻撃することである。式王子は善に用いれば人のためになるが、悪に用いれば人を害することになるのである。

このような恐ろしい力をもった式王子の幣は、頭にいくつかの刻み目を入れ、それぞれに十二のちぢを入れた、見るからに荒々しい印象を与えるものが多い。しかし、山川のものの幣のように目口を刻むものはないようである。この点では家の神や高神の幣の切り方に近い。ここに式王子の幣が、その強力なパワーを強調する一方、怪奇な化け物と区別されていることを感じる。

 

 

 

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