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この小さく簡単で素朴な御幣がハビロである。地元の複数の方から聞いた名称は「ハビロジョ」もしくは「ハベロジョ」と呼んでいる。「ジョ」は「様」のことであるから「ハビロジョ」は「蝶様」であることは間違いない。

オナリ神の残影がさす九州山地の片隅にある田代。そこにかつて「ハベロジョ」と呼ばれる「蝶神様」に豊作の願いを託し祈る行事が女性たちによって執り行われていた。

 

◎ケズリカケ「ヒロ」◎

一九八八年から八九年にかけ、五ヶ瀬川流域の山間集落を、鬼火焚きでの作り物を中心に数多くの農家を訪ね簡単な聞き取りをしてまわった。そのとき『ヒロ』という御幣の原形のような美しいケズリカケに出会った。

一九八九年三月五日、宮崎県西臼杵郡日之影町鹿川西の内の村中数夫氏宅を再訪し、「ヒロ」を作ってもらった。

「ヒロ」は本来一月十三日に作られたもので、ノリウツギの枝を五〇センチの長さに切り、三〇センチほどを樹皮のまま残し、二〇センチを白茎にして、よく切れる小刀で糸のように一本一本上部に削っていって、白い糸がたくさん垂れた様に見える美しいものができあがる。

 

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3]美しいケズリカケのヒロ

 

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4]ヒロを供える村中数夫さん

 

 

 

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