徳之島向かち 飛びゅる綾蝶(あやはべら)
一時(いとうき)待て蝶 伝言(でいんごん)ぐゎまた
頼も 頼も
(松浦豊敏著『風と甕』所収徳之島節より)
谷川健一氏は近著『日本の神々』のあとがきのなかで、姉妹が兄弟の守護神となる[オナリ神の信仰]について補足し、「小野重朗は『おもろさうし』に恋歌が少なく十三首しかないが、そのうち六首までが、オナリとエケリの恋いを主題にしたものであるという、その中には、兄が船旅をするときには、オナリの私がその先導となろうという、次のような歌がある。
吾がおなり御神の
守らてて おわちやむ
やれ ゑけ
又弟おなり御神の
又綾蝶(あやはべら) 成りよわちへ
又寄せ蝶(はべら) 成りよわちへ
(巻十三-二二〇)
と引き、姉妹神が美しい蝶になって弟を守りにやって来たと歌っていると記し。「奄美の民謡の中にはオナリ神が白い鳥となって兄の船のトモにとまっている、という内容のものもある。」とも記す。