日本財団 図書館


072-1.gif

図14]簡素な土地堂

 

072-2.gif

図15]豪華に飾られた土地堂

 

072-3.gif

図16]土地堂と門神堂に貼られた春聯の文句

 

もちろんこの序列に従ったと思われる配置もある。しかし、全く逆の配置のものも数多く見られる。両者の事例について、住民に理由を聞くと、前者では、「東為上、門神為上、西為下、土地為下」という説明がされた。逆のケースでは、「東為上、土地為上、西為下、門神為下」という説明が聞かれ、方位、左右の上下観に両者の矛盾はないものの、土地神と門神の序列に対する解釈が異なっている。また、二街門をもたない住宅では、大街門の突き当たりに土地堂のみが設置されている。平遥においては、土地神の効力を重視する傾向があるようだ。

なぜ、これらが二門の両脇に設置されるのだろう。外部の者が入ることを許容していた外院には、悪気も容易に侵入すると考えられたのではないだろうか。そこで、神々の力でそれらを撃退してもらうと同時に、家内安全を保証しようとしたのだ。また、土地堂および門神堂は、内・外の分節を、より明確に意識させる装置としても働いていたとは考えられないだろうか。

 

◎住まいの秩序の現状と今後◎

中華人民共和国成立後の一九五〇年ぐらいから、土地改革の名の下に、基本的に個人の土地所有が認められなくなり、住宅もかつての大家族が住む住宅から多くの血縁関係のない他人同士が中庭を囲んで住む集合住宅のようになっているのが現状である。正房に居住する家族は、祖堂を利用することができる。そこには、普段さまざまな生活用品が積まれているが、祭祀期間には、整頓して祭祀をおこなう。廂房や倒座に住む家族は、祖先や諸神をまつる期間、棚や机などに位牌を置くことによって、そこを神壇とする。一件の住宅の中に複数の神聖な空間が作られるのである。分割利用の現状は、神聖な空間と生活空間を明確に分節することを特徴とする平遥の住宅を各室均質な中庭型集合住宅に変えてしまったのかもしれない。開口部同士が中庭を挟んで向き合った住宅の形式は、他人どうしが住むには、プライバシーの確保という点で問題があるかに見える。しかし、もともと祖先、家長を頂点としたヒエラルキーをもつ血族とはいっても、もともと複数の世帯が中庭を中心として共同体としてのまとまりをもって住まっていたのが四合院住宅なのである。つまり、現在の状況は、血族の別世帯が共同生活を営んでいた住宅から他人どうしが住まう住宅へと変化したにすぎないのである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION