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図11]九星飛宮法によって設置された装置

(天津大学建築系提供の図面をもとに作図)…東座西面で街門を真西にもつ二件は、両者ともに“延年武曲金星”の方位である東北に窰楼をもうけており、北座南面する二件は、東側の正院では、窰楼を、西側の偏院では、二門を基準に見た“延年武曲金星”の方位である北に設けている。西向きの二軒は模式図の(b)に、南向きの二軒は(e)に対応している

 

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図12]

この住宅は、北向きの敷地に建つ、北西入りの正院と西側に配置された偏院とからなる。

現在は、数家族が分割利用している。正房の屋根上の西南隅に風水楼が建っており、これが西北方向、偏院の方を向いて置かれていることを疑問に思い、正院の廂房に住む老婆に理由を聞いた。すると、「一〇年ほど前に偏院の街路側の棟が二階建てに建て替えられた。すると、間もなく正院正房に住んでいる夫婦の息子が自動車事故で死んだ。そこで、風水楼を二階屋に向けて建てた」「高すぎる建物は、周囲に悪影響をおよぼす」「高い建物は、低い建物を押さえつけるからそれを補正するために風水楼を建てるのだ」ということである

 

巨大な資本をもつ商人の家や官僚の家は、一様に高台に作られており、建物も一際高くそびえている。社会的な上下関係が微妙なスカイラインの凹凸にあらわれているのだ。また、一般庶民同士では、お互いけん制しあいながら、相手のよりも高い正房を求める。このとき、後ろの住宅の高さは気にされず、左右と前の住宅との関係に注意が払われる。このときに、風水装置が格好の道具となる。香港での風水戦争は、有名になったが、ごく最近の平遥でも類似のことがおこっている。正房の高低が隣り合った兄弟同士の争いをひきおこしたり、隣人とのトラブルの種になったりしている。(図12])

 

◎住空間の内と外◎

平遥の住宅は、よそ者には少し取っつきにくい。長く続く外壁にぽっかりと開いた門。その門をくぐると第二の門。それらが閉じられていれば門を叩くのに躊躇するし、仮に門が開いていて中庭が丸見えになっていたとしても、ずかずか入るのはためらわれる。突然わが家に見知らぬ人が入って来たら警戒するだろう、と自分の経験をもとに予想するからだ。ところが、いざ一歩中に入ってみると、予想に反して拒否反応が少ない。これは、現在の居住状況によるところが大きいようだ。現在ほとんどの住宅には、複数の家族が住まっていて、集合住宅といっても良い環境にある。そして中庭は共有空間となっているから、無関係の私がうろうろしていても、さほど注意をはらわないのかもしれない。

 

 

 

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