二街門をもたない住宅では敷地全体を、二街門をもつ場合には、それより奥の敷地を図のように九等分する。中央の無印の部分は中庭にあたる。まず、それぞれ門の位置を決定し、そこを基準として方位の吉凶を割りふっていく。そして正房が最吉の方位になるように調整する。例えば図中(a)は、北西に門を設置した場合で、西南が延年上吉という最吉方にあたるので、これを含むように南に正房を設ける。風水楼などを設置する場合にもこの方位を選ぶ
<装置の選択>
これらは、風水楼<風水照壁>窯楼のように小規模なものから大規模なものまで三段階ある。この中からどれを選ぶかは、正房の屋根形状やその家の経済状態によって任意に決められる。風水楼は、他の二種類が陸屋根の上にしか設置できないのに対して、規模が小さいため、切妻や片流れなどにも設置しやすい。また、大規模なものほど材料も手間もかかるため、窯楼を設置するのは裕福な家だけだったそうだ。現在では、風水楼か、小規模な風水照壁しかつくられていない。
<設置の方法>
これらの装置が設置されるケースには、二とおりある。一つめは、正房の高さを補正する場合。二つめは、敷地の都合などで正房が吉方位に建てられなかった場合である。
住宅の建設時に、風水先生に意見を求めるのは現在でも一般的だ。平遥では「九星飛宮法」という方法が使われている。これは、先天八卦によって方位を分け、正房の位置に従って、門を配置するものである。(図10])この方法によれば、八方位は、半分ずつ吉方と凶方にわけれられ、正房は、吉方、とくに延年上吉の方位に建てることが望ましく、敷地の都合で正房を吉方に建てられない場合は、二街門の位置を調整することによって補うという。しかし、「九星飛宮法」によって門の位置を調整しても、吉の方位が得られない場合もある。
二つのケースともに、正房の屋根上に良い方位を選んで、風水装置を置くのだ。(図11])
<風水戦争>
さて、住宅の敷地内では、家族間の序列が建物の高さに反映されているが、周囲の住宅同士の社会関係も、その正房の高さに反映される。