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クバン県ザライ人の村の集会所ゾン。この中でも儀式が行なわれる

 

太鼓を先頭にしたゴングの楽隊が、それに続く女たちの踊りの集団が、水牛の繋がれた柱の周囲を左に、ゆっくりと旋回する。この時戦士の出で立ちの男たちは水牛をいたぶり、こうすることで神は喜ぶというのである。不思議なことに、どの民族においても神とは結構子供っぽいところがあるようである。飲んでは踊りをひとしきり繰り返したところで、雄叫びとともに、ゴングのリズムが早くなると一人の戦士が剣を掲げて、激しく水牛の周りを回ったかと思った瞬間、剣は水牛の胸部を貫き、大きな体が土埃をたてて大地に沈んだのである。息絶えた水牛の口に女たちの手で草がいっばいに詰め込まれるのを見て、古代の記録として、犠牲となった人間の口に米が詰め込まれたという話が一瞬頭を過ぎった。また、この一連の儀式を見ていると、アイヌの熊祭りを思わずにいられなかった。犠牲の死と木の再生。神との契約など、違った角度から見ると旧約聖書の世界を見ているようでもあった。これらの儀式は中部高原の多くの民族集団のなかで、いまも行なわれている。私が確認しただけでもこの儀式は、北からコート人、セダン人、ブラウ人、モノン人、カホー人など、特にモンクメール語系の人々の間で濃厚に継承されている。また、集団ごとに「供犠柱」の形は異なるが、儀式そのものの考え方は共通のものである。

 

 

 

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