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その頂に巨大な鳥が風に舞っているのである。ゾンと呼ばれる村の集会所には酒の入った壺が並べられ、美しい褌(ふんどし)姿の男たちが、列をなしてゴングを演奏しているのである。

ゆっくりとしたゴングの音色に合わせるように、豊饒の鳥は真っ青な空を悠々と飛んでいる。感動的であった。村人に勧められるままに酒を飲むうちに何とも言えない安堵と喜びが込み上げ、不覚にも汗と涙にまみれて酩酊してしまった。

 

◎気品に満ちた美しい供犠柱◎

翌年の二月の乾季を見計らって、二回目の取材を行なった。この時からはまるで違う場所で取材しているように、さまざまな事柄が目まぐるしく展開しはじめた。ザライの人々の居住地アズンバでは、盛大なお墓と別れる儀式に出会った。中部高原の人々の死者に対する祭儀は驚くほど丁重で、死後は墓前に食事を欠かさず、二、三年経ち経済的事情が許せば死者に立派な住まいを建て、村中の人々を招待して盛大な『お墓と別れる儀式』をとり行うのである。その建物の様子は、沖縄の洗骨後に骨を収めるジシーガミを思い起させる立派なものである。お墓と別れる儀式を撮影したあと立ち寄った村で不思議なものに出会うことになる。前回は難民キャンプにしか見えなかった赤茶けた集落のなかに、目の覚めるような美しい柱が立っていたのである。初めて見る「水牛供犠」の柱である。すでに儀式は終わって三日ほど経っていたが、その気品に満ちた美しさは強烈な印象だった。さらに、幸運は続いた。お墓と別れる儀式や、供犠柱を見ての私の興奮ぶりを見て、文化報道部のスタッフはやっと、私の求めているものに気付いた様子で、バナ人の居住区、クバン県への取材を勧めるとともに、取材許可を取ってくれた。

 

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ザライ人の村で、お墓と別れる儀式。洗骨した骨を草葺き屋根に納め、その前には親族の人形が置かれる

 

 

 

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