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14]「柱の広場」に建てられた柱(リンゴ)と豊穣を司るバイラブ神の山車

 

太陽暦のビクラム暦新年は、じつはこの暦が開始された紀元前一世紀の頃には、春分の日であった。しかしこの暦の十二ヵ月は、太陽が黄道十二宮の各星座の領域に移る時をもって月初(サンクラーンティ)としているので、星座の位置が徐々にずれて行くにつれて新年(白羊宮入り)も移動し、現在は四月半ばになっているのである。

昼と夜の時間が全く同じになる春分の日、古い年は死んで新しい年が生まれる。この日には時間の境界を超えると同時に、天空のスペースにおいては春分点という空間の境界をも超えるのである。現在は二十日ほどずれているが、本来のこの意味は人々の記憶に止められている。この祭儀が行われる“柱の広場”が町はずれにあるのも、境界の儀礼とすれば理由のあることであると思われる。

吉祥の模様が描かれた二本の幟は、死にゆく古い日と生まれてくる新しい日を示しているのではないだろうか。そしてこの幟が国王の名において作製されるのは、王の時間を司る者としての役割を鮮明に示しているものであろう。このことが人々の意識のなかで曖昧になってきたとき、二本の長い幟は二匹の大蛇に変身し、さまざまな物語が生まれてきたのではないだろうか。

ビスケー卜祭は柱建立が中心の祭儀ではあるが、後のマッラ時代に付加されたと思われるバイラブ神(シヴァ神の念怒の相)とバドラカーリー女神の山車巡行も、大変な興奮狂噪状態のうちで進行する。

 

 

 

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