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北陸三県の特色を生かした相乗効果を期待

 

田平英二・近畿日本ツーリスト(株)取締役社長

 

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まず、これまでWACに参加した印象を…

田平 実は昨年の東北WACに初めて参加させていただきました。大変素晴らしい会議でした。岩手県盛岡会場では、伝統芸能に対する認識、観光が県の事業の大きな要素であることに感心しました。中央会場では運輸省の幹部の方たちも出席、瀬島会長がリーダーシップを発揮、会議の中で6県の知事さんが壇上に上がって立派な東北六県観光立国宣言を発表されました。これほど内容の濃い会議は民間だけではできない、とびっくりしました。

 

WACの観光振興への影響についてはいかがですか

田平 一言で申しますと、旅行へのお客さまの誘引効果ですが、これは情報量と人の動きは大体一致するんです。一例ですが、NHKの大河ドラマが放映されますと、何百万人という人が移動します。これが情報なのです。今年WACが北陸3県で行われます。情報を発信するには、やはり運輸省、地方自治体、旅行業界などの観光産業が官民一体となって、実際に観光しながら宿泊・食事をし、そして会議を行う。このことが素晴らしいんです。

 

旅行業はどのような役割を果たすのでしょう

田平 戦後50何年を経て、これまでの物づくりから余暇といいますか、心の時代に大きく転換してきています。その一翼を担うのが観光産業で、旅行業の果たす役割だと思います。ただ、観光産業といっても旅行をはじめ宿泊、交通、飲食、おみやげ屋だけでなく、最近はテーマパークを含めたイベントや農業・漁業とすそ野が広がっており、雇用の創出に相当寄与します。また、旅行客が増えますと、地域の産業は底上げされますので、多くの県が観光にウェイトをかけてきており、北陸もそういう要素があると思います。

 

観光振興のためにはどうすればいいでしょうか

田平 宿泊業の場合、今までの団体中心から限りなく個人に特化した受け入れ体制を敷いていく必要があると思います。また、観光地は楽しい雰囲気をつくっていただきたい。その要因の第一は自然です。乱開発をしないで、自然をそのまま残し、観光地に花が溢れるような環境をつくる。それとともに地場産業。北陸には九谷焼とか漆器とか高岡の鋳物など、美術品を支える産業が多い。見学コースに入れるとかあるいはおみやげとして工夫を施す。また、輪島の朝市、金沢の近江町市場も楽しめます。伝統芸能は、おわら風の盆が観光客を引きつけます。それから日本を代表する寺社仏閣が沢山あります。例えば、福井県の永平寺、那谷寺、能登半島の総持寺など観光資源として大変貴重です。

私はかって中部営業本部長時代、毎月1回は北陸の支店を回りました。北陸の良さは自然です。立山や白山の雪景色は素晴らしい。海岸線は富山から越前の若狭湾まで続いており、山岳と海岸の両方の美が楽しめます。さらに、お酒に魚。そのうえ水がほんとにおいしい。また、金沢は小京都といわれ、伝統ある和菓子類を求めて若い女性が旅行をされます。武家屋敷など古いものは、余り手を加えないでそのまま残っているのも魅力です。

 

国際観光の面はいかがでしょうか

田平 昨年国内観光旅行をした人は延べ約2億5000万人ですが、海外から訪れる観光客は410万人。一方、海外へは1580万人出国しています。せめてその半分ぐらいは外国から来ていただきたい。その中心は東南アジアで台湾、韓国、ほんとうは中国から人口の1%でも来ていただきたい。その傾向は出てきております。例えば、台湾の人の観光目的は温泉、桜、雪が3要素です。実際に先駆的に外国人を受け入れている地域や旅館もあります。

 

北陸WAC開催に際し、何か地元に対する注文は…

田平 まず3県が一体となって観光を強くアピールしていただきたい。それぞれ各県バラバラではなく、トータルとしてどうするのか。観光立県とまでいかなくても、一緒になって全国から観光客を呼び込んでいただきたい。文字通りワイドです。広域というとみんな同じだという意識になりがちですが、3県はそれぞれ特色を持っていますので、それを組み合わせながら相乗効果を出す方向で取り組んでほしいと思います。

 

 

 

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