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最後ですけども、観光の誘引力は、立体イベント化というか、観光の立体化が必要だと思います。ホテルの素晴らしさも含んでいます。特にインバウンド、外国からのお客様をお迎えする場合には、宿泊施設の質も、相当要求されてくるんではないでしょうか。特に東京の方が地方に行く場合には、東京の、あるいは、大阪もそうですが、都会の若い人たちは、それなりの生活をずっとやってきておりますから、泊まる旅館のクオリティーなんかも、かなり、しっかりしたものが要求されてくるというのは、間違いないと思いますが、そういうものも含めた、立体イベントの構成です。そのコンセプトの善し悪しによって、優劣と言うか、勝ち負けというのは、かなり出てくるんじゃないかなと、私は思っております。ここに、物見遊山か、知的体験かという、両極になるようなことを書きましたけど、物見遊山で観光に行くというのは、絶対的なニーズです。私も、相当疲れておりますから、少し時間がもらえたら、何にも考えないで、物見遊山で旅行してみたいなと思います。難しいこと考えないで、あっちでお酒を飲み、こっちで踊りを見て、こちらでひっくり返ってという旅行をしてみたいなあと思います。でも一方では、あっちへ行って、この作家の足跡を辿りたいだとか、こちらへ行ってはここの美術館を訪ねてあれを見ていきたいだとかいう思いは、確かにあります。その両方を皆さんは、お持ちになっているんだと思うんです。その両方をうまく組み合わせるということも必要でしょう。だから、旅行というものは、あるいは、観光というものは、今までのように、単純、素朴で、お腹が空いてるでしょう、はい食べなさい、などというものではなく、味だとか、その時の雰囲気だとかを楽しんだり、あるいは、そういう知的なものを楽しんだりする方々が増えています。また、そういう要素がかなり要求されてくるんではないかというふうに思っております。ということは、そういうものを作れるかどうかということが、イベントを作れるかどうかだというふうにお考え頂いて結構でございます。

今年あった2つのものを、もう一度例に出させて頂きますと、和歌山の場合は、「癒す・満たす・蘇る」という、非常に抽象的なメッセージ、日本の博覧会の中で、これほど知的で抽象的で、わけのわからないスタイルをとったのは、初めてだと思います。また、あれほど、囲い込みでやったら、絶対失敗していたと思われるような、過疎でやった博覧会も初めてですが、それが、かなりの訴求力を持ちました。訴求力ということは、お客さんの心に響くものがありました。よし、行ってみようじゃないか、その行ってみようじゃないかというのが、1回限り行ったって、なかなかそういうことはわかりませんから、今年行けなくても、じゃ、来年行ってみようか、とか、熊野古道は無くなりませんから、年々つながってくれば、あの観光資源は、今日のテーマに沿っていうと、イベントです。熊野古道を歩いてみようというのはイベントですが、かなり大きなパワーを、未だに発揮し続けているんだなというふうに思っておりますし、しまなみ海道の方も、本当に私は、自転車で渡ったり、歩いたりするという考え方、捉え方が、これほど訴求力を持つと思ってなかったほど、橋の上を、リュック背負ったり、色んなスタイルで歩いておられます。

 

 

 

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