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また、何々県という大きな組織がプロモーションをされる場合には、逆に色んなことが、平等に書きすぎていて、あれもこれも、これもあれも・・・、これは書いてないのと同じです。行こうとする人、イベントに参加しようとして、お金を払ってわざわざ行こうとする人が、どれを見たってよくわからない、ここに行くのは、何しに行くのかっていうのが、全くよくわからないのです。これを、海外旅行で例えて、皆さんが、ヨーロッパに行くとか、アメリカやハワイに行くという時に、ハワイに行く場合はハワイ州の何々郡の観光パンフレットなんか見てもしょうがないでしょう。ハワイ全体のことがあって、よし、私は、この前はオアフに行ったから、今度は、カウアイヘ行ってみよう、だとか、こっちへ行ってみよう、ここにはこういうのがあって、じゃ、こういうツアーを組もうというふうにやると思います。西海岸へ行く時は、こう行って、ああ行って、ロサンゼルス行って、サンフランシスコヘ行ってと、やるでしょう。ヨーロッパでもそうです。つまり、面でとらえて、そこで、ある興奮を味わいたいというか、自分なりの目的でわざわざそこへ行くんだというのが当たり前です。だから、呼ぶ方も、少し懐の広い、面でとえた観光のイベント化というものを構成する必要があります。もう一ついうと、面よりも立体が良い。立体というのは、単に言葉の綾なんですが、色んなものがそこに入ってきて良いんではないかと、私は思っています。例えば、立体を構成するものに、体験博の経験というのが、あちこちで今使われて、私も苦笑しています。例えば、どこかのお寺で座禅を組むであるとか、先ほどいったように、夕陽が沈んでいくのをじっと見ているであるとか、あるいは、たまたまそこでコンサートがあって、それを組み入れてみるであるとか、あるいは、食べ物があって、それを実際作ってみたり、あるいは、食べてみたり、それもかなり特殊なものであるとかというものとの組み合わせです。そういうものを提示することによって、立体化してくると私は、思っているんです。

観光というものを、こういう形で、立体的なクリエイティブ作業であるという捉え方が、どうも日本の観光の世界では、まだこれからのような気がいたします。なぜかと言うと、今まで、お寺がある、名所・旧跡がある、そこへ来るのは当然であると思ってましたから、何もしなくってもそういうものが磁石になって、お客さんに来てもらえるんだという前提のもとに、全てが組み立てられていました。例えば、温泉もそうです。昔の人は、休みもあまり取れないし、本当にそこへ出掛けて行くというのが、大変な時代だったわけですが、今は違います。これからはますます、モビリティーというのが、非常に簡単になってくる。自分で自分のイベントを作るということに、もっと時間を費やすことができるようになります。3連休ができたり、あるいは、高齢化していったりと、あらゆる社会情勢が、そういう方向を目指しているとすると、もっとその中に、クリエイティブな参加性というものを組み込む必要があります。その為には、そういう素材を用意してプレゼンテーションすべきではないかというふうに、私は思っております。

 

 

 

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