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私はよく、夕陽が沈む、だって売り物になるし、桜が咲く、だって売り物になるし、食べ物がおいしいもそうだし、そこで何か、雪が降れば雪がイベントになるでしょうし、暑ければ暑さがイベントになるでしょう、というようなことをよく言うのですが、なかなかそれだけでは物足りなくて、本来は、今申し上げたように、「そこの」というある特定の属地的な特性、属性を持つべきだというふうに思っています。そうなると、それを見てもらうということが、観光イベントになります。その時に、単に「ほらあるでしょ、見てください。」「はい、あるでしょ、聞いてください。」と言って、あちこち案内するだけでは、なかなかイベント力がつかないです。簡単に言うと、集客力としてのパワーがつかないのです。そこでこれらを構成します。この構成は、雑誌の編集や、あるいは、テレビやラジオの番組の構成と、まったく同じと言っていい位で、歌番組ということで、歌手がでてきて歌を唄うだけじゃ駄目で、あるいは雑誌でも、旅行の記事の紹介ということで、順番に、同じようなスペースで、北から南へ羅列して表を組んでも、駄目で、ある形の思いを込めて、こういう形で見たらどうですかという、組み合わせをするわけです。この組み合わせそのものが、クリエイティブです。そうすることによって、「この」祭りの、「これ」を見て欲しいという「これ」が明確になってきます。「この」景色の、「これ」を見て欲しいということが、非常にはっきりしてきます。これをはっきりさせないと、なかなか売り物になってこないのです。

私事なんですが、今年、和歌山県の南の方で、人口が20万人位の所で、ジャパンエキスポやったのですが、延ベ300万人に至る人たちに来て頂きました。ここは、本来、色々なことがある所なんですけれども、東京の皆さんは知らないんです。そこで、「癒す・満たす・蘇る」という言葉を作りまして、ここへ来ると癒されますよということで、いわば、効能にあたるものを、「熊野古道」という設定にしました。熊野古道というのは、1000年前からあるわけですから、今更取ってつけたように言わなくても、昔からそう言われてきたわけだから、良いじゃないのということで、この熊野古道を歩きましょうと、単純明快なメッセージといたしました。

もう一つ、しまなみ海道という、瀬戸内海で3つ目の橋ができたということで、広島県と愛媛県が一緒に、いわば、セールスキャンペーンです。これは、今までなかった言葉、つまり、「しまなみ海道」という言葉を、作りましてそのエリアをイメージをして、「この」に当たる部分が何なのかっていうと、この「しまなみ海道」というのは、とびっきり景色が良いですから、来てください。その、とびっきり景色が良いというのも、それだけじゃインパクトが無いというんで、瀬戸内海を60キロ歩いて渡ってください。それで、全部の橋が歩いて渡れますから、瀬戸内海を歩いて渡ろうというキャンペーンを、張ったようなわけです。現実に、ものすごい人がいらっしゃいまして、延べですが、1000万人を超えたと言われております。

 

 

 

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