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4) 誘客事業(戦術)の実施

事業の対象となるのは、大きく分けて旅行業界、コンシューマー、マスコミの3つです。しかし、SIT(スペシャル・インタレスト・ツアー)、インセンティブ等極く限定された人々をターゲット・マーケットとする場合は、誘客事業の対象は、これらの人々や旅行を企画・手配する旅行エージェントや一般企業に限られてきます。

事業の内容については、本書「マーケティング・マニュアル」の中身を参照していただきますが、留意したいことは、事業を実施する現地において、プロフェッショナルと思われる方法で行うことです。

例えば、地方公共団体では、派遣者自身が通訳を介して日本語または外国語で観光魅力を説明することがしばしばあります。数多くある世界のデスティネーションの中で、どうしてそのデスティネーションに送客しなければならないのか、そこへ旅行しなければならないのかを説得するには、より高度なプレゼンテーション技術が求められるため、その道のプロに任せることが得策です。また、セミナーやレセプションの際、主催者の代表者が何度も挨拶に立のは返って招待客に対し失礼となり、もっとスマートなアピールの方法を工夫するべきです。

 

5) 事業のモニターと評価

一般的な傾向として、地方公共団体等が実施する海外での誘客事業は、単発でその場限りのものが多くあります。事業の評価の基準として、観光説明会やレセプションに業界関係者が何名参加した、旅行見本市に何人来訪した、媒体にどのくらいのサイズの記事が掲載きれた等が使われていますが、これらはあくまでも各事業の初期段階でのモニター(効果測定)であって、最終段階での評価ではありません。

観光誘客宣伝事業の効果測定は難しいと考えられていますが、目標を設定する段階で、あらかじめ目標を測定可能な具体的なものにすればこれが可能になります。パッケージツアー商品の造成・販売、それによる送客(誘客)人数は、旅行エージェント、航空会社に対するヒアリング調査ですぐにわかります。また、デスティネーションの知名度の向上等は、誘客活動の前後に一定の期間をおいてコンシューマーへのアンケート調査を実施する方法によってもある程度効果を測定することができます。

 

6) 次期の長期目標の設定とマーケティング戦略策定

長期目標がカバーする3〜5年が経過し、目標の達成度に対する評価を行いますが、当然その間、時々刻々とマーケットや地元デスティネーションの状況は変化しています。したがって、誘客事業が実を結びつつあっても、これが継続するよう恒常的にマーケットの情報を収集・分析し、長期計画が終了する前に、次期の長期目標とマーケティング戦略が策定できるようにします。どのデスティネーションにもライフサイクル(寿命)があります。台湾マーケットでは、1997年後半から九州への旅行者数が頭打ちの兆しを示す一方、北海道への旅行者数が急増しています。九州の関係者にとっては、今後どのように従来の旅行者数を維持し、さらに増加を続けさせるかの勝負どころに差しかかっています。

 

5. 外国人旅行者誘客成功のポイント

 

上述のマーケティング戦略策定と実施にあたり、押さえておくべきキーポイントがあります。JNTOの過去の経験、成功例の分析に基づいて、誘客が成功するためのポイントを以下に挙げます。

 

1) ビジョンと長期目標

ハウステンボスは、将来の「アジア国際観光交流拠点都市」を目指し、近い将来には外国人訪問客を100万人に増やすというビジョンを持ち、このビジョンのもと具体的誘客事業や外国人向け免税店の設置等の受入体制が計画・実施されてきました。目指す目標やビジョンが明確でないと、個々の事業の目指す方向が分散するばかりでなく、様々な事業を継続的且つ効果的に行うことが難しくなります。

 

 

 

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