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4. マーケティング戦略の実施の方法

 

マーケティング戦略を策定した後は、この戦略を様々な事業(戦術)として展開していきます。まず、各年の短期目標を設定し事業計画を立てこれらを実施します。事業実施後は、効果をモニターし、最終的な段階で評価を行います。さらに、長期目標の設定期間が終了するまでに、次期の新しいマーケティング戦略を策定し、同様なプロセスを繰り返します。

 

1) 短期目標の設定

戦略は3〜5年間と長期的に設定してあるので、これを1年単位の目標に細分化します。例えば、1999年5月より広島県と愛媛県の間にしまなみ海道が開通し、台湾マーケットでは中国・四国・九州・関西方面への新しいツアー商品の開発・販売の増加が予想されます。これらのデスティネーションの地方自治体及び業界関係者は、「新しいツアー商品の造成・販売により、台湾人客誘客で○○万人を達成する」ことを長期目標に掲げることができます。各年の短期目標としては、広報宣伝活動によるデスティネーションの知名度アップ、航空会社との協力のもとでのパッケージツアーの造成及び広告等による販売促進活動の展開、宣伝ツールの整備・地元業界の台湾人客に対する接遇サービスの充実等による受入体制の整備等が考えられます。

 

2) 誘客事業(戦術)の実施計画策定

短期目標に基づいて各年の事業計画を作成します。予算、組織体制等を考慮しつつ、前述のマーケティング・ミックスを組み合わせて、最大限の効果を上げるようにします。この場合、日本側デスティネーションの地方公共団体・業界だけでなく、いかに外国マーケットの協力を得るかが成功のキーポイントとなります。

現在、台湾マーケットでは「北海道ブーム」で、従来の「さっぽろ雪まつり」のシーズンだけでなく、7万人以上の台湾人客が年間を通じて万遍なく北海道を訪れるようになりました。日本側の北海道観光連盟、地元の宿泊施設等の努力だけでは、実を結ぶことは困難であったと考えます。台湾と北海道の間に直行便がない状況を克服するために、日本アジア航空が国際線と国内線の団体特別運賃を提供し、また広告活動による大規模キャンペーンを展開したこと、エバー航空が多数のチャーター便を運航したこと、JNTOの協力のもと日本観光協会台湾事務所が、北海道は「ヨーロッパ風のリゾート」であるイメージを形成するよう台湾のマスコミに継続的に働きかけていったこと等、日本側関係者にはなかなか見えない台湾マーケットの「前線」で、コンシューマーに北海道ツアー商品を購入させるまでの努力がありました。

 

3) 受入体制の整備

地方公共団体を始め、特に地元の業界関係者は、食事、入浴など外国人旅行者の生活習慣や嗜好をよく理解し、旅行者が異国(日本)の楽しみを味わえるとともに快く滞在時間を過ごせるよう受入体制を整えなければなりません。日本各地では温泉が自慢で立派な施設を整えているため、外国での誘客宣伝をする際、「温泉」を目玉にすることがよくあります。しかし、例えば、中国人には他人と一緒に大浴場で入浴する習慣がなく、初体験をするにはよほどの勇気と好奇心が必要なことを受入側は理解しておかなければなりません。このため、温泉の楽しみ方を旅行者に上手に説明できるよう旅行エージェントの視察やガイドの研修等を行うことも一案です。

FITをターゲット・マーケットとする場合は、外国語の案内標識の設置、観光案内所での外国語対応の整備、ひとり歩きできるような懇切丁寧な案内パンフレット・ビデオテープなどのツールの制作等、さらに木目細かな受入体制が必要となってきます。

 

 

 

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