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2) 実績主義

民間企業が、売上利益、利用客数等の実績を基に営業活動の評価をする様に、地方公共団体による誘客事業も誘客人数や経済効果による評価を導入するのが望ましいと言えます。幸い、地方公共団体による誘客事業もハードセル化してきています。目に見える効果が上がるならば、直接の受益者である地元の業界関係者もさらに積極的に誘客事業に参画してくるでしょう。

 

3) 先行投資

誘客事業は資金やマンパワーを投資しても短期間に収益を回収できるとは限りません。ある程度の資金を投入しないと効果が現れないともいえます。ハウステンボスは、東南アジアマーケットに対し、年間1億円以上もの予算を投じています。シーガイアやスペースワールドは、台北市に現地採用のセールス要員を配しています。東京ディズニーランドは、毎年アジア各地でキャンペーンを展開しています。台湾のマスコミに広告を掲載する観光関係団体も少しずつ増えてきています。また、地方公共団体でもソウルを始め韓国に観光宣伝・誘客を主目的とした県の事務所が置かれています。これらにはかなりの経費がかかりますが、誘客を実現し継続させるための有効な投資といえるでしょう。

 

4) 組織体制の拡充

外国マーケットとのビジネスを本格的に拡大したり、恒常的に発生するようになると、現地の言葉や商習慣に通じた人材が必要となります。台湾からのパッケージツアーやインセンティブ・ツアーのランド手配を担っているアジア・ツーリストセンターでは、中国人スタッフが活躍しています。また、前述の大型テーマパークや外国人客を多く受け入れているホテルにも、セールスや接遇のスタッフには中国人や韓国人を配しています。地方公共団体でも海外事務所の設立を始め、今後はマーケティングの各段階において、地元在住の外国人の活用も一考に値します。

 

5) 官民の一体化

地方公共団体は、デスティネーションのイメージ普及・知名度向上や宣伝ツールの制作を始め、地元関係者の調整等の重要な役割を担っています。一方、地元の宿泊施設、観光施設、旅行会社は実際に客を受け入れ利益を享受する立場にあるため、誘客の実現には地元業界の参画が不可欠です。これまでの外国人旅行者の誘客成功例では、実質的には民間主導で行政がこれを支援するかたちが大勢を占めています。

次表のように、官民の両輪がうまく噛み合って、マーケティング戦略を策定・実施していくことが肝要です。

 

6) 送客側関係者との一体化

受入側の官民が一体となることだけでは十分ではありません。やはり送り出すマーケットの航空会社、旅行エージェント、マスコミ、JNTO海外事務所、日本観光協会台湾事務所等と一体となり、様々な事業を展開しなければ送客まで結びつけるのは容易ではありません。特に、誘客事業を開始する前のマーケティング戦略策定の段階でこれらの関係者から情報を入手し、マーケット調査を行うとともに今後の協力の要請をしておきます。

 

7) 観光マーケティングのノウハウ

世界各国が外国マーケットにおいて誘客を熾烈化している大競争時代においては、より高度で専門的なマーケティングの知識とノウハウが求められます。特に、地方公共団体による誘客ミッションが毎週のように派遣される台湾、香港のようなマーケットでは、現地の関係者に対して実際のビジネスに繋がる提示をせず、地元の行政代表者による「○○県、○○市をよろしく」という形式的な表敬訪問は、多忙な相手の立場を尊重していないという姿勢として映り、却って地元の印象を悪くし逆効果になっています。

 

8) 国際観光振興会(JNTO)の活用

地方公共団体の観光行政担当部署では、観光マーケティングの経験者が少なく、また情報やノウハウが蓄積されにくい環境にあります。一方、JNTOは、過去35年間日本への外客誘客活動の最前線に立って、訪日旅行の促進に努めてきました。JNTO海外事務所及び日本観光協会台湾事務所では、最新のマーケット情報を収集・分析するとともに、現地の旅行業界・マスコミ関係者との人的ネットワークを構築しています。JNTOは、マーケティングの各分野にわたって、日本各地の地方公共団体及び民間企業の関係者に様々なサービスを提供しているので、次項の「国際観光振興会(JNTO)の活用」をご参照いただき、外客誘致実現のお役に立てることを希望いたします。

 

 

 

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